TOPIK IIの試験構成(聞取り・書き取り・読解)と3級(120〜149点)の判定基準・学習戦略を、日本語話者向けに体系的に整理する導入講です。
🎯 この講の学習目標
この講を終えると、あなたはTOPIK II(韓国語能力試験の上級レベル区分)がどのような試験で、3級を取るために何点必要かを正確に説明できるようになります。試験勉強を始める前にまず必要なのは、単語や文法を一つでも多く覚えることではなく、「自分が受ける試験の地図」を頭に入れることです。ゴールの位置と地形が分からないまま走り出すと、努力の方向がずれてしまうからです。
本シリーズは全25講で、日本語を母語とする学習者(日本語話者)がTOPIK II 3級(中級)に合格することを目標にしています。第1講である今回は、試験全体の構造・各領域の特徴・級の判定方式・3級のレベル感、そして限られた時間で3級に届くための学習戦略までを一気に整理します。ここで全体像をつかんでおけば、第2講以降で学ぶ文法や語彙が「試験のどこで、どう使われるのか」を意識しながら学べます。
この講では、まずTOPIKという試験そのものの背景から見ていきます。
📖 TOPIKとTOPIK IIの背景
この節では、TOPIKという試験がそもそも何のためにあるのかを確認します。TOPIK(Test of Proficiency in Korean、韓国語能力試験)は、韓国語を母語としない人の韓国語運用能力を測定・評価する公式試験です。韓国政府(教育部)が主管し、国立国際教育院(NIIED)が施行しています。つまり、民間の検定ではなく国が発行する公的な語学証明である点が大きな特徴です。
TOPIKには大きく2つの区分があります。初級を対象とするTOPIK I(1〜2級を判定)と、中級以上を対象とするTOPIK II(3〜6級を判定)です。私たちが目指す3級はTOPIK IIに含まれるため、本シリーズで扱う試験はすべてTOPIK IIになります。ここを最初に区別しておくことが重要です。TOPIK Iは「聞取り」と「読解」の2領域だけですが、TOPIK IIには「書き取り(作文)」が加わるため、対策の質がまったく変わってくるからです。
TOPIKの成績は、韓国の大学・大学院への進学、韓国企業への就職、各種ビザ申請、政府奨学金など、さまざまな場面で提出資料として使われます。そのため単なる腕試しではなく、進路に直結する実用的な資格として位置づけられています。なお、試験形式は従来の紙とマークシートによるPBT(Paper-Based Test)に加え、コンピューターで受験するIBT(Internet-Based Test)が2023年11月に初めて施行され、以降実施回数が拡大しています。受験する国や会場によって形式が異なる場合があるため、申込前に必ず公式案内を確認してください。
📊 TOPIK IIの試験構成
この節では、TOPIK IIがどの領域を・何問・何分で・何点満点で測るのかを具体的に見ていきます。ここは本講の中核なので、数字を正確に押さえてください。TOPIK IIは聞取り(듣기)・書き取り(쓰기)・読解(읽기)の3領域で構成され、各領域100点、合計300点満点です。
| 時限 | 領域 | 問題数・形式 | 時間 | 配点 |
|---|---|---|---|---|
| 1時限 | 聞取り(듣기) | 50問・選択式(マーク) | 60分 | 100点 |
| 書き取り(쓰기) | 4問・記述式 | 50分 | 100点 | |
| 2時限 | 読解(읽기) | 50問・選択式(マーク) | 70分 | 100点 |
表の通り、1時限で聞取りと書き取りを続けて(合計110分)行い、休憩をはさんで2時限に読解(70分)を行います。試験時間は正味で合わせて180分にもなる長丁場です。日本語話者にとって注意すべきは、聞取りと書き取りが同じ時限で連続する点です。聞取りが終わると即座に作文へ頭を切り替える必要があり、この「切り替え」に慣れていないと書き取りで焦ってしまいます。
とりわけ書き取り(쓰기)は日本の一般的な語学検定にはあまりない記述式で、TOPIK IIの山場です。4問の内訳は次の通りです。51番・52番は文章中の空欄に合う一文を書く問題(各10点)、53番はグラフや表などの資料を200〜300字程度で説明する問題(30点)、54番は与えられたテーマについて600〜700字で論じる問題(50点)です。3級を目標とする段階では、まず配点の手堅い51〜53番で確実に得点することが現実的な戦略になります。この点は第17・18講で本格的に扱います。
🏅 級の判定方式と3級のレベル
この節では、「何点取れば3級なのか」という最も気になる部分を明確にします。TOPIK IIには「合格・不合格」という個別の合否ラインがあるわけではありません。3領域の合計点(300点満点)によって、自動的に級が判定される方式です。合計点が下の基準に届いた最も高い級が認定され、最低ラインである3級の基準にも届かない場合は「불합격(不合格)」と表示されます。
| 級 | 合計点(300点満点) |
|---|---|
| 3級 | 120〜149点 |
| 4級 | 150〜189点 |
| 5級 | 190〜229点 |
| 6級 | 230点以上 |
つまり私たちの当面の目標は、合計で120点を超えることです。300点満点で120点というのは全体の40%です。満点を狙う必要はまったくなく、各領域で4割前後を安定して取れれば3級は十分に射程に入ります。この「4割でよい」という感覚は、学習のプレッシャーを大きく下げてくれる重要な事実です。ただし合計点方式のため、極端に苦手な領域を作らないことが大切です。
3級のレベル感は、公式の評価基準で「日常生活を営むのに大きな困難を感じず、さまざまな公共施設の利用や社会的関係の維持に必要な基礎的言語機能を遂行できる」と説明されています。かみ砕くと、役所・銀行・郵便局などでの手続き、身近な話題についての会話、簡単な文章の読み書きができるレベルです。文法面では、この後の講で学ぶ連体形(관형형)や間接話法(間接引用)、受身・使役といった中級文法を使いこなせることが目安になります。
🎯 3級合格のための学習戦略
この節では、限られた時間で120点に到達するための領域別の優先順位と時間配分を提案します。やみくもに全範囲を均等に勉強するより、配点効率を意識するほうがはるかに効果的です。
第一に、読解(읽기)を得点源にする戦略です。日本語話者は漢字語の知識という大きな武器を持っています。韓国語の語彙には漢字に由来する語(漢字語)が非常に多く、「도서관(図書館)」「준비(準備)」「관계(関係)」のように、意味も音も日本語と近いものが数多くあります。この強みを活かせば、読解は最も点を伸ばしやすい領域になります。まずは読解で確実に4〜5割を確保する構えを作りましょう。
第二に、聞取り(듣기)は毎日少しずつ耳を慣らすことが鍵です。聞取りは一夜漬けが効かない領域で、短時間でも毎日継続することが最も効果的です。この後の各講で学ぶ文法表現が音声として聞こえたときに瞬時に理解できるよう、テキストを黙読するだけでなく、必ず声に出して読む(音読する)習慣をつけてください。
第三に、書き取り(쓰기)は51〜53番に的を絞ります。いきなり54番の長文論述に挑むと挫折しやすいため、まずは空欄補充の51・52番で決まった型を覚え、53番の資料説明で使う定型表現(「〜が増加した」「〜に比べて」など)を蓄積するのが近道です。原稿用紙の使い方(マス目・句読点の扱い)も減点対象になるため、第17講で扱うルールを早めに身につけましょう。
そして全領域に共通する土台が中級文法と中級語彙です。本シリーズは第2講から第13講までを文法、第14講以降を語彙・各領域別戦略にあてています。文法の一つひとつが読解・聞取り・書き取りのすべてで繰り返し登場するため、序盤の文法講をおろそかにしないことが、結果的に全領域の底上げにつながります。
⚠️ よくある誤解と注意点
この節では、TOPIK II対策で日本語話者が陥りがちな3つの誤解を先回りして正しておきます。最初に知っておくだけで、遠回りを避けられます。
誤解1:「全問正解しないと級がもらえない」。すでに述べた通り、3級は120点(40%)で認定されます。分からない問題があっても合格できるので、難問に固執して時間を浪費するより、解ける問題を確実に拾う姿勢が大切です。特に選択式の聞取り・読解は空欄のまま出すと0点なので、時間が足りなくても最後は必ずマークを埋めてください。
誤解2:「TOPIKに『話す』試験も含まれる」。会話能力を測る「말하기(スピーキング)」評価は、TOPIK本体(TOPIK I・II)とは別に実施される独立した試験です。本シリーズが対象とするTOPIK II 3級では、話す試験は含まれません。ここを混同すると学習範囲を見誤るため注意してください。
誤解3:「漢字語が近いから読解は楽勝」。漢字語は確かに強力な味方ですが、韓国語には日本語と意味がずれる漢字語(例:「공부=勉強」であって「工夫」ではない)や、和製漢語と異なる語順・助詞の運用があります。似ているからこそ油断すると足をすくわれます。強みは活かしつつ、思い込みで訳さず文脈で確認する慎重さを持ちましょう。この具体例は語彙の講で詳しく扱います。
📝 まとめと次講予告
今回学んだ要点を整理します。次の項目を自分の言葉で説明できれば、導入は完璧です。
- TOPIK IIは3〜6級を判定する試験で、3領域(聞取り・書き取り・読解)各100点・合計300点満点。
- 試験時間は1時限に聞取り(60分)+書き取り(50分)、2時限に読解(70分)。
- 書き取りは51・52番(各10点)、53番(30点)、54番(50点)の4問構成。
- 3級は合計120〜149点。満点は不要で、全体の40%が当面のゴール。
- 日本語話者は漢字語を武器に読解を得点源にし、聞取りは毎日継続、書き取りは51〜53番に集中するのが3級への近道。
全体の地図が頭に入ったところで、いよいよ具体的な中級文法に入ります。次の第2講では、TOPIK IIのあらゆる領域で頻出する「連体形(관형형)」——動詞・形容詞を名詞につなげる -는/-(으)ㄴ/-(으)ㄹ の使い分けを学びます。読解でも聞取りでも土台になる最重要文法なので、しっかり準備して臨みましょう。
📚 参考資料
관련 주제
- TOPIK II
- 3급
- 등급 판정
- 듣기
- 쓰기 53번
- 읽기
- 120점
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